■「オーダーメイドの手縫いだから、今頼んでも完成はお正月だから。そろそろね。」
と老舗の鞄屋に誘われる。
ランドセル、買いました?
■うーむ。
私学も考えているのだが、あそこはランドセルなど使わないんじゃないかしら。
特にこどもに黒色はありえんな。
と、ぼんやりしつつ。
■こだまっちが気にいったのは、黒のコードバン。
つやが美しい。買うならこれだ。
これにしたら、六年後に小銭入れに作り直してもらおう。
ミニランドセルにできます、
って言われたけど、別にいらんな、わし。
■完全なご祝儀相場だ。
でも、一生に何度もないかばんなら、本物に触れて欲しいと思うじゃない。
て、この「一生に何度もない」と言うフレーズに動かされるよな。
でも40年生きてきて、人生って、一生に何度もないことの蓄積だとも知っている。
あと、美術館とか本とか、芝居とか、身につける素材などの、目に見えないものの体験が品性とか、ひととなりに影響することも。
手縫いだし。
本物の馬の皮だし。
しかし、コードバン。
おそるべし値段…
と悩ましい夏。